【イスラムと女性】モロッコの女の人生ノンフィクション②姪編

モロッコの女の人生第2弾。今回はあどけない小学生の時から知っている姪です。SNSがもたらした男女の出会いの場と結婚という地道な生活の現実。その狭間で起こった結果は決して彼女だけの事でなく、モロッコの若い世代に関わる新たな問題の一つかもしれません。

イスラム圏でSNSが男女間にもたらした出会い

当時、21歳で結婚した姪サミラ(仮名)。

サミラは小さなころから美人で、年頃になって美女ぶりに磨きがかかり、結婚した時も、2人同時に求婚され、販売員とサッカー選手のうち、やはり華があるサッカー選手を選んだ。現在でも親が縁談を持ってくることが多いモロッコで、サミラが選んだ相手は家族や知人の誰も知らない相手。マラケシュの人間でもないので、本人がネットで知り合った相手であることは確かだ。

未婚の男女がカフェでデートしたり、映画館で映画を見るのもコソコソと隠れなければならない世界で、SNSがもたらした出会いと親の目に触れないコミュニケーションの場が、どれほど男女の世界を広げたか想像いただけるだろうか。サミラは見合いや知人の紹介が多いモロッコで、ネットの出会いで結婚しはじめた最初の世代であると言える。

深く付き合うことなく結婚

相手はマラケシュから3時間以上離れた海辺の町の男性で23歳。双方若すぎるし、サッカー選手といっても地方の無名選手。サミラとその母親はアガディール(海辺のリゾート)にアパルトマンがあって、そこで夫婦2人で住むのよ!と嬉しそうだったが、私や夫は地方の無名選手にそんなお金はない、上手い話ではないだろうと半信半疑だった。上手く行かないと分かっていても、恋に落ちた男女は親にも止められないのだから私たちの話に耳を貸すはずはなく、あっという間に結婚して「まずは」という名目で相手の実家へ、サミラは嫁いでいった。

花嫁の足に施すヘンナ

結婚前に付き合うという選択肢がないのだから、恋に落ちたら結婚へ一直線である。結婚式の裏方の台所で、2人とも若すぎると感想をもらした私に、最近はこのくらいの年で結婚する人が多いと女性たちに言われた。母親たちは何より娘が結婚前に貞操を失うのを恐れているし、娘たちは何より結婚できずに年を取ることを恐れている。

従妹たちの失敗を目の当たりにしているサミラと母親は、結婚を急いだだけでなく、婚約式や結婚式でも、嫁に行っていないずっと年上の親族を気にしてか、直前まで式の日程を漏らさず、何をするのかも分からず、私たちは大いに振り回された。(*モロッコでは未だ黒魔術や嫉妬による邪視の力が信じられている。普通であればそこまで警戒しないが、サミラの母は特にそれを信じているので、親族にも詳細を告げないのだ。)

嫁いで数カ月後

そんな風にして結婚したものの、案じた通り、2人が夫婦だけで暮らすことは一度もなく、嫁いだ先には旦那のまだ10代の兄弟姉妹がいて、嫁としてこき使われたサミラは、数カ月でマラケシュの実家へ戻ってきた。

二十歳そこそこで恋に落ち、付き合う過程を飛ばして、知った人のいない土地の他人の家で、義両親と義兄妹に囲まれ家事に明け暮れればどんな恋も冷めるのが普通だ。そのままサミラの夫は一度もマラケシュに来ず、半年以上放置され、実家に引き籠り続けたサミラは久しぶりに見た時、お腹も腰もでっぷりと肉が付き、すらりと美しかった面影は無かった。

間もなく別の女性と再婚したいから離婚してくれと言われ正式に離婚。結婚式であんなにはにかんで嬉しそうだった新郎の変わり身の早さといったら…男は何度でもやり直しがきいて、女は失うものばかりだ。

男に翻弄されない為に必要なもの

男性優位の婚姻において女性が翻弄されない為には…口約束を信じるべからず等々、書ききれない位沢山あるけど、一つは(特に都市部では)女性に安定した職業か、稼げる手に職があることが重要ではないかと思う。もしくは実家の財力だ。家族知人の介入が無いと本当に自分の身一つで嫁に行くのだから、何も持たずに挑めば相手の思うがまま。男並みに稼げれば嫁入り先でも一目置かれたはずだ。サミラが裁縫が好きならいくらでも教えたのだか、そのような地味な作業は好きでないらしいから残念である…。

*この記事は2019/08/20に書かれた前アメブロを再編・加筆したものです。

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