フェズ刺繍だけじゃない*めくるめくモロッコ刺繍の世界

近年日本でも知られるようになってきたモロッコ刺繍。しかし一口にモロッコ刺繍と言ってもモロッコには色々な種類の刺繍があります。有名なフェズ刺繍の他にも、今にも失われようとしている美しい技法がある…知られざるモロッコ刺繍の種類と使われ方をご紹介します。

フェズ刺繍

幾何学模様が美しいフェズ刺繡。裏も表も同じ模様なのが特徴です。
私も昔刺したことがありますが、布の縦横の糸をマス目にして往路で片方ラインを入れ、復路でもう片方ラインを入れ、往復で模様が完成するという刺すのに目も頭も疲れる刺繍です。でも出来上がりは素朴でとても可愛いんですよね…
モロッコでは来客時に出すナプキンとティーポット用ミトンなどが一揃えでよく販売されています。その他クッションカバーやテーブルクロスにも用いられています。布の縦横の糸が大きく揃っている生地でないと刺すのが難しいので、服地に刺すのは相当な腕でないと出来ません。

トロワフィル

フランス語で3つの糸と呼ばれている刺繍。専用のミシンを一筆書きの要領でぐるぐる動かし曲線的な模様を描きます。手元をぐるぐる結構なスピードで回すので熟練の技が必要です。

フェズ刺繍と異なりこちらは服飾用の刺繍です。結婚式の豪華なカフタンから普段着のジュラバまで、今も昔もモロッコ女性に人気。私もこれが大好きで職人さんに刺繍部分だけ刺してもらってバッグやバブーシュを仕立てたりしました。

刺繍職人さん(職人は男性しか見たことない)の店には沢山のサンプル図面が並んでいて、これを見ながら選ぶのがとっても楽しい時間なのですが、商品を作ろうとするとなかなかオーダー通りに出来上がらず、今は遠ざかってしまいました…機会があればまた挑戦したいと思います!

ちなみにこの刺繍はモロッコだけでなくアラブ圏など周辺国でも使われています。

 

 

 

陰影が美しい刺繍・タルズ

アラビア語で刺繍を意味するタルズと呼ばれる刺繍。ジグザグミシンを使用して模様を描き出すのですが、サブラ糸の光沢が美しい立体と陰影を生み出す、大好きな刺繍です。(サブラ糸とは厚みと光沢があるモロッコ衣装に欠かせない糸束。サボテン由来と言われることもありますが、現在流通している糸はナイロン糸から出来ています。)

こちらは女性のミシン仕事。ぽってりした丸みのある花模様やモザイクタイルのような総刺繍柄などがあります。ミシンでもとても時間がかかり、この刺繍のテーブルクロスやティーセット用ナプキンなどはモロッコ女性も憧れる品です。アトリエではこの刺繍のクッションカバーを定期的に買付販売しています。

女性が刺す縁飾り刺繍・フッダルス

ジュラバの袖やフードの縁飾りに使われます。サブラ糸を使い、玉止めの要領で糸を盛ってレースのように造形していきます。小さな三角模様の素朴で可愛いものからエレガントな造形まで沢山の種類があります。初めてこれを見た時は、何もない空に糸だけで美しい造形が出来上がっていく様に感動しました。

アトリエの縫子さんも昔からこの刺繍が出来て、以前羽織ものに商品化したこともあるのですが、何というか自分が子育てにてんやわんやで美しく時間がかかる手刺繍にじっくり向き合う事が出来ず、継続はできませんでした。時間に余裕のできた今、改めてこの刺繍で何か挑戦したいと思っています。

男性が刺す縁飾り刺繍・タルサン

同じくジュラバの袖やフードの縁に刺す手刺繍なのですが、こちらは男性の仕事です。

手持ちにあまり良い写真が無く、これは協力隊時代に自分でチュニックを縫って縁に装飾をしてもらった写真ですが、もっと豪華な装飾が沢山あります。

サブラ糸に撚りをかけコード状にして、模様を造形していきます。トロワフィルの手刺繍版といった感じです。モロッコは今でも手縫いで民族衣装を仕立てる文化が残っています。しかしながら、ここ十数年だけみても物価上昇に伴い労力に工賃が見合わない、若い世代がやりたいような仕事でもない為、新たな職人は少なく、残っている仕立屋も高齢の方が多いです。

モロッコの伝統工芸は比較的職人の世代交代が出来ている印象ですが、インテリアや雑貨など大きな市場があるものに比べ、オーダーメイドの民族衣装の仕立てはあくまでモロッコ人相手の需要。このまま手縫い服の技術が廃れていくのは残念ですが、安い服が世界中に流通している現代において止めようのない流れかもしれません。

まとめ

タルズにフッタルズにタルサン…似たような名前で聞き分けはつかないですが、こうやって並べてみると明確な違いがあります。何と言っても刺繍によって男性の仕事か女性の仕事かはっきり分かれているのが面白いです。手でもミシンでも糸を撚って刺すタイプは男性、そうでないタイプは女性なのですが、理由があるのでしょうか…?そもそもイスラム圏の男性が刺繍や針子をするのも意外に思われるかもしれせん。

記事を書いていて改めてモロッコ刺繍の魅力に気が付きましたし、職人も刺繍仕事も減っている昨今、アトリエフォカリとしても、これらの刺繍を取り入れてまた何か生み出せたら…と思いました。

 

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